真のファイナンシャルアドバイザーの育成を目指す、米国型IFAの今後の取り組み
創業の背景について教えていただけますか?
まず初めに私のキャリアからお伝えすると、「新卒で新日本証券(現みずほ証券)に入社し、その後AIGスター生命(現ジブラルタ生命)で保険を学び弊社を立ち上げた」という流れになります。みずほ証券時代から「クライアント本位の提案を行い、生涯伴走したい」という思いは持っており、転勤の無いIFAへの挑戦を考えていました。そんな中、保険業界に一度チャレンジしたのは山一証券からAIGスター生命に転職され、大成功している先輩からのアドバイスで「独立するのであれば、その前に生命保険は絶対に経験した方が良い」とお誘いをいただいたことがきっかけです。
証券と保険をしっかり学び、独立の準備が整ったタイミングにリーマンショックが重なったこともあり、2009年に弊社を創業しました。今では保険業界で培った経験が非常に役立っており、証券会社からすぐに独立しなくて良かったと感じています。
保険業界でのどんな経験が今の活動に役立たれているのでしょうか?
アメリカで真のファイナンシャルアドバイザーに出会い、最先端の金融に触れ、学んだ経験が今の活動の指針となっており、一番影響を受けました。
AIGスター生命に入社後は主に生命保険の販売等が中心となり、セールスマネージャーとして活動を行っていました。お陰様で保険業界への転職初年度からMDRTに入会することが出来ました。そして、米国で開催されるMDRTアニュアルミーティングに参加した際に驚きを得たことが大きなきっかけとなりました。日本のMDRT会員の殆どが、生命保険の成績で入会するのに対して、アメリカでMDRT会員として活動するファイナンシャルアドバイザーは、ほぼ全員が金融商品と生命保険、両方を取り扱うハイブリット型だったのです。本場アメリカのプロフェッショナルと触れ合う機会となり、これこそが自身の目指す姿であると確信し、同時に日本のIFAもハイブリット型、即ち金融のトータルサービスを行っていくべきであると気づかされました。アニュアルミーティングやTOT会議では、学べることや新たな気付きが非常に多く、毎回の会議に欠かさず出席し、最先端のビジネススキームやクライアントサービス、金融知識を取り入れるようにしています。
現在は自分自身も証券・保険のハイブリット型IFAとして活動を行いながら、次世代のIFA育成にも取り組んでいます。
資産運用のプロフェッショナルのあるべき姿とは、どんな姿なのでしょうか。
ある証券会社が「投資の相談先」に関するアンケート調査を行ったのですが、日本人の投資家の方が一番初めに情報収集する先はSNSという結果が出たそうです。そして、2番目が家族や友人という順番になっているのですが、本来であれば、一番最初にファイナンシャルアドバイザーが入ってこないとダメだと思います。しかしながら日本でファインシャルアドバイザーと言えば、証券や保険、銀行窓口の営業マンにセールスされるという印象が強くなってしまっており、「彼らにアドバイスを求めに行くと結局、金融商品を売り込まれてしまう」というイメージが先に立ってしまうので、投資に対する相談先としての順位が上がってこないのではないでしょうか。
一方でアメリカのファイナンシャルアドバイザーは、医者や弁護士、税理士に並ぶ専門家としてのポジションを確立しています。
「病気を罹ったら医者に行く」、「法律について相談したくなったら弁護士に尋ねる」のと同じ感覚で、「資産運用の相談はファイナンシャルアドバイザーに問い合わせる」といった流れができているのです。そのため、欧米のアドバイザーの多くは日本の証券マンやIFAと違い、新規開拓等の営業活動はあまり行わず、彼らは頼れる専門家であるため、医者が診察を行い、薬を処方するように、顧客の資産に関する問題を解決するプロフェッショナルという立ち位置なのです。顧客側としても営業されている感覚はありません。そして、欧米のFAは大半が小規模事業者であり、大企業のように会社の方針やノルマに左右されることは少なく、顧客本位のコンサルティングが実現でき、コストをかけずに高いパフォーマンスを維持しています。日本で小規模なIFA法人をイメージしたときに、コンプライアンスの点に疑問や不安を感じる方がいるかもしれません。しかし、アメリカでは、アドバイザーが本業のお客様に対するフォロー活動に専念できるよう、バックオフィスの人員が充実しているのも特徴で、アドバイザー1人に対して、3~4人のスタッフを揃えているのが通常です。私もプロフェッショナルとしてクライアントのフォローに専念できるよう、バックオフィスは私1名に対して3名の体制をとっています。
伊月さんの活動内容について教えていだだけますか?
クライアントに対して資産運用のトータルアドバイスを証券・保険の両軸から行っております。既存のクライアントからの紹介をいただく機会が多くあり、テレアポや飛び込みの営業等は一切行っておりません。そのためクライアント一人一人に向き合う時間を多く確保することができています。
このような活動を15年以上続けてきたため、クライアントも私も老後の年金問題等の心配はないと感じる程になっています。IFAビジネスに参入し、顧客本位の提案を行うことで、クライアントもIFAも幸せな未来を築くことが可能になると実感しております。保険募集人の方が保険と資産運用を提案することができれば、いずれ資産運用の収益が保険の収益を逆転し、新規開拓を続けなくとも、いつの間にか収入が確保出来ている、という状況を作り出すことができます。多くの方にIFAへ挑戦をして欲しいと考えています。
なぜ保険募集人の方がIFAになるべきだとお考えなのでしょうか?
一つ目に、保険募集人の方は、顧客のライフプランに寄り添った提案を行うため、資産運用におけるゴールベースアプローチの考えを既に持たれている点が一つ大きいと思います。投資の基本は長期的な保有を前提とし、投資と保険はセットで考えていくべきなので、保険募集人の方との親和性は高いと感じています。顧客側も、運用、保険、年金等を一元管理してもらえることで、より安心感を提供することができます。また、このようにワンストップでコンサルティングができるファイナンシャルアドバイザーは現在、日本にまだ多くいませんので、先行者利益の獲得も見込めると考えています。次に現在MDRT会員として活動されている方であれば、生命保険で一定の収入が確保出来ていますので、IFAとして先を見越した活動を始めやすいと思います。目先の収入が確保出来ている間に平行して資産運用のスキル・ノウハウを習熟して頂くことが出来るのではないでしょうか。
一方、全ての方が当てはまる訳ではないですが、証券会社からいきなりIFAとして活動を始めてしまうと、目先の収入の確保のため、手数料を目的とした回転売買や仕組債等を止む無く提案してしまうケースも発生する可能性が高くなると想定します。こういった点からも、現在は保険募集人の方を中心にIFAとして活動を始めるためのサポートを行っております。
次世代IFAの育成ではどのような取り組みを行われているのでしょうか?
IFAを指向する保険募集人の方向けに、私自身のキャリアの中で、特にIFAとして活動して来た15年間で生々しく体験して来たこと等を発信するといった、教育プログラムを提供しています。現在は、MDRT会員の方をメインの対象として、証券と保険の両軸から顧客の課題を解決するにはどのようなコンサルティングを行うべきなのかを細かく解説し、実践で使えるまで学んでいただいています。私のカリキュラムを受講している方々がIFAとして活躍することを想像すると、私自身のモチベーションも上がります。実際にIFAとしてもの凄い勢いで成果を残し始めている方もいらっしゃり、育成に取り組んで本当に良かったと感じています。国もNISAを抜本的に拡充するなど、資産運用を促進する流れを後押ししていますので、今後、生保系IFAとして活動される方をサポートすることが今の私の使命だと感じています。
IFA業界が発展していくためにはどんなことが必要だと思われますか。
保険業界からIFAにチャレンジする方々をもっと増やすべきではないでしょうか。逆に、証券会社からIFAに転職する方は以前に比べ増加率は下がっている状況です。一方、保険募集人の方はIFAとして活躍するポテンシャルを秘めていると思います。ただ、保険募集人の方がIFAとして活動を開始するには、少し向かい風な状況にもなっています。投資家保護の観点から、そもそもIFA(金融商品仲介業者)として活動するための審査が厳しくなっており、特に証券業務未経験者の参入ハードルは高くなってきているように感じます。
このような状況を改善すべく、今後の私の取り組みとしては、IFAとして学ぶべき教育プログラムを確立させ、そのプログラムを受講した方であれば、IFA(金融商品仲介業)の認可を取得しやすくなるような仕組みを作りたいと考えています。国としても個人金融資産が増えてインカムゲイン、キャピタルゲインが増大し、投資・消費に回ってくれば、税収の増加も見込めます。結果として、投資家・我々・国家、全てが潤う三方よしの関係が構築できると感じています。なかなか簡単なことではないですが、情報発信を続け、協力していただける方々を募っていきたいです。
IFAとして活動されている方、IFAをこれから目指す方へメッセージをお願いします。
日本のIFA業界はその知名度、規模等から今はまだ黎明期で、やっと、これから開花していくステージに来たと私は考えています。アメリカには現在、独立系のアドバイザーが約29万人いるのに対して、日本はまだ8000人程です。日本の証券外務員は約7万人と言われていますが、その大半が証券会社に勤務されている方です。それに比べて生命保険の募集人登録人数はなんと、約120万人という規模です。このギャップは、潜在的にIFAにステージアップしていく人の数も増えて行く可能性が大きいと言えるのではないでしょうか。日本の市場規模からも、IFAの数は少なくとも10万人くらいは必要だと私は考えており、1家庭に1アドバイザーが付くような状況が望ましいと思います。今後、資産運用のニーズが益々高まっていくことは容易に想像がつきますし、IFA業界が発展していくには、現在活動している方々の更なる情報発信や活躍が不可欠ですが、新規参入される方々のチャレンジも必要ですので、是非とも一緒にIFA業界を盛り上げていき、国民の資産増大と日本社会の発展に貢献していきましょう!
経歴
株式会社フィナンシャルリンクサービス
代表取締役 伊月 貴博 氏
1987年 新日本証券株式会社(現 みずほ証券)入社
2004年 AIGスター生命保険株式会社(現 ジブラルタ生命)入社
2009年 株式会社フィナンシャルリンクサービス 創業
現在に至る