証券リテール未経験者を一人前のIFAに育て上げる、業務委託型IFA法人の組織・教育体制とは
初めに、これまでのご経歴を教えていただけますか?
私のファーストキャリアは塾講師です。なぜ、塾講師になったのかというと、私の高校生時代まで遡るのですが、「人には人の人生を変えられる力がある」と身をもって感じた経験があったからです。当時の私は勉強がとても苦手で、偏差値は24程度、進路も適当に考えていたのですが、高校3年生の10月にアルバイトの先輩から「勉強して選択肢を作って進路を選べ」と本気で諭され、担任の先生からは「時間がかかるかもしれないけど、倉成だったら大丈夫だ」と激励され、一念発起して猛勉強に励んだところ、偏差値を72まで伸ばして大学に合格することができました。普通の人は無理だと考えるところを本気で向き合ってくれた二人がいたことで自分の人生は大きく変わりました。
この経験から教育に興味を持ち、大学生時代から学習塾でアルバイトを始め、そのままその会社に新卒で入社しました。地元の町塾でありながら、人の人生を変えるきっかけを創りたいと戦略的に学生たちの学習スケジュールを立て、開成高校や都立のトップ校への合格実績を創り上げまして、その後は教室長として塾全体のマネジメントを経験し、延べ3000名の支援に携わりました。学生達の進路に携われる塾講師はとてもやりがいのある仕事であると感じてはいたものの、受験を経て卒業していく学生達の、その後の人生の支援に携わることは難しく、もっと長期間で人生に寄り添える仕事はないかと模索していたところ、命の次に大切なお金に携わりたいと思い、未経験ながら野村證券のFA職にチャレンジすることを決めました。
FAは転勤がなく、お客様の生涯のパートナーとしてサポートを行えるという私が目指していたキャリアであり、強い想いと大きな自信をもって入社したのですが、1年目は大変苦戦を強いられました。結果にこだわりすぎて、1つ1つの行動に着目できていなかったことが原因で、全く数字が上がらず、まさかの挫折の1年間を過ごしました。しかし、翌年、行動目標を明確にし、1年間その目標を達成するために活動するということを貫いたことで、全セールスの上位1割に入るまでに成長することができました。その後7年半野村證券に在籍しましたが、これまでの塾経営(マネージメント)の経験と野村證券のFA(証券リテラシー)の経験を最大限に活かすためにIFA法人を立ち上げ、今に至ります。
IFA法人立ち上げのきっかけについて詳しく教えていただけますか?
立ち上げのきっかけは3つ程ありまして、1つ目は、「お客様本位の提案」を実現するためです。こちらはIFA業界に従事されている多くの方が目指されているのではないでしょうか。IFAは複数の証券会社と提携を行うことが可能となり、お客様も多くの商品ラインナップから比較検討し、商品の購入を行えますので、「お客様本位の提案」に近づけると感じたためです。
そして2つ目は「自身の経験を他の方にも提供したい」という想いです。野村證券でFAとして経験を重ね、資産運用だけでなく、承継やタックスプランニングや不動産等ビジネスマッチングの提案の幅も広がり、年収も安定させることができ、未経験でも証券リテールとして活躍できた経験を他の方に提供したいという気持ちが芽生えました。
3つ目は環境的な要因なのですが、「コロナ禍を迎えたこと」にあります。当時は対面での営業を控えるようにという会社の方針があり、電話のみでお客様フォローを行っていました。一方で、当時所属している支店までは通勤をしなければならず、この通勤時間のロスに加えて、看板である野村證券の名刺も自分の顔も見せられない中で、営業活動を行うのは非効率だと感じ、独立を決意しました。
独立されてからこれまでどのような組織体制で活動されているのでしょうか?
現在は業務委託型IFA法人として17名で活動しております。私がIFA法人を立ち上げるとなった際に参画してくれたメンバーとリファラル採用により、新たな人員が加わって現在の体制に至ります。
弊社の人員体制には他社にはない特徴があるのですが、全メンバー17名のうち証券リテール未経験者が半数の8名所属しています。業務委託型で未経験採用というのは本当に少ないと思うのですが、弊社では、未経験の方でもこれまでの社会人経験を活かしながら、証券リテール経験者のIFAと遜色なく成果を上げていらっしゃいます。
また、組織作りには非常に重きを置いていて、これまで証券リテール経験の有無を問わない採用を行ってきましたが、だれでも受け入れてきたという訳ではなく、今のフェーズでは目先の売り上げよりも、今後の拡大を考えたときにどれだけ強固な組織基盤が作れるかが大事だと考えているので、同じ方向を向いて走っていただける方にのみ参画いただいております。将来的には今の草創期メンバーが今後ジョインすることになる成長期メンバーへ、そしてその成長期メンバーが、その後ジョインすることになる成熟期メンバーへとUBUNTUの理念や考え方を伝えていただき、より強く大きな組織を目指しています。
未経験者が多く在籍されていますが、どのように一人前に育て上げるのでしょうか?
前提として弊社は偏差値で考えると65のIFAを一人前としておりまして、年収で表現すると1000万円を確保できるほどのIFAの育成を目指しています。
育成マニュアルで金融リテラシーを学び、誠実さと向上心を持って必死に努力し続けることができれば、この年収は確保できると考えています。一人前に到達するための育成プログラムの中で一番重要視しているのは「同行」です。私やグループ長が同行を行い、お客様とのコミュニケーションの取り方、信頼関係の作り方を学んでいただいています。どれだけ知識をインプットしても実際の話し方や使い方を知らない限り成果につながることは難しいと考えています。
ただ、事前の知識も重要になりますので、スラックで「倉成塾」というチャネルを開設しています。毎朝のニュースの解説からお客様への情報の伝え方、案件の共有などを行っていまして相場を想定する力や考え方を身に付ける場として活用していただいています。さらに、「スキル向上のための動画作成」にも取り組んでおります。例えば「金利とは」という動画を見ていただき、商談で活かせるようになるまでロープレを行っています。このように未経験の方でも活躍ができるような教育体制を整えています。
今後、拡大していくにあたり組織作りが重要なポイントになってくるかと予想されますが、どのようにお考えでしょうか?
業務委託型IFAで組織作りができるのかと、疑問に思われる方もいらっしゃるかと思いますが、私は制度を整えることで組織作りはできるのではないかと感じています。
弊社ではグループ制度を用いていまして、グループ長がグループの目標予算を持ってメンバーのマネジメントを行い、各グループが掲げた目標を達成するとグループ長の報酬が上がるという制度を設けています。グループ長になるには、自分でグループメンバーとなる人員の採用を行う必要があります。このような制度を用いることで、グループ長を含めて、グループ長になりたいメンバーが採用に注力してくれるので人員が増え、グループ長はグループ予算を達成するために組織のマネジメントも積極的に取り組まなければいけない、更に自分の報酬がメンバーのパフォーマンスに左右されるので、採用においても誰でもいいという安易な判断にはならず、優秀な方を採用し続けたいと思えるようになるということで、持続的に組織が拡大できる制度になっていると思っています。
なぜそのような組織体制を作られたのでしょうか?
プレイングマネージャーが輝ける組織にしたいと考えたからです。組織を拡大させようとすると中間管理職となるマネージャーが必要となります。しかし、現在多くのIFA法人ではプレイヤーにしか焦点が当たっておらず、マネージャーになるメリットが薄い。そこで、私はメンバーからマネージャーになりたいと思える、マネージャーが輝ける会社にしたいと思い、今の組織制度を考えました。
一方で、マネジメントに寄りすぎてしまうと、相場感やアドバイザーとしての能力が鈍ってしまいます。私は、一生稼ぎ続けることが出来る方が良いと思っており、メンバーに対しても、マネジメントをしながらも常にアドバイザーとしても成果を残せる人材であって欲しいと願っています。そういったグループ長がどんどん増えれば、自然と会社は大きくなると信じています。
弊社は今後拡大路線を歩んでいこうと考えております。全メンバーでスケールするメリットを共有しています。社長が何を考え、会社がどういった方向に向かうべきなのかを知っている組織は強いことを知っているからです。スケールメリットの一例を挙げると弊社では各IFAの案件をすべてスラックで共有をしておりますので、規模が拡大していけば共有の数が増え、それらを参考にすることで提案や活動の質が上がり、良いサイクルが生まれます。また、知名度が向上すればお客様からの信頼も獲得できると見込んでいます。さらには証券会社やその他パートナー企業等との良質な提携も増えることで、お客様のニーズにより応えられると考えております。
今後目指されている定量的な目標はございますか?
目標として10年後に400名体制で預かり資産は1000億円を目指しています。組織図としては80名のグループ長と各チームにメンバー4~5名が在籍する体制を作り上げる想定です。更にグループ長を統括するエリアマネージャーを10名程、新規ポジションとして導入を考えています。エリアマネージャーもグループ長と同様に管轄エリアで目標を達成すると報酬がアップする仕組みとし、会社全体でマネジメントに注力できる組織を目指していきます。
また、弊社の強みは「金融リテラシーの育成」だと認識している分、証券ハイレイヤーの方々が参画した場合、噴きこぼれをつくってしまうと考え、積極的な採用をせずにいました。それでも、組織が大きくなるにつれて、自然と証券ハイレイヤーの方の参画もあり、この度ついに社内にハイレイヤー専用のエグゼクティブクラスを開設することができました。エグゼクティブクラスは一定の収益を3ヵ月連続で上げられた方のみで構成される特別なクラスです。このエグゼクティブクラスをつくったことでこのクラスに入りたいと社内のIFAのモチベーションが上がりました。また、採用活動でも証券ハイレイヤーの方に積極的に声をかけられるようになりました。
組織を大きくしたいと考えられる想いの源泉を教えていただけますか?
実は、創業当初大きな組織を作りたいとは考えていませんでした。しかし、実際にIFA業界に従事しているとIFA人口が増えないことに課題を感じ、組織の拡大を目指すようになりました。現在、日本国内のIFAの人口は約7000名となっており、毎年増加はしているものの、伸び悩んでいるフェーズを迎えているのではないでしょうか。その原因としては、証券会社出身の方以外が参入できる環境が整っていないことにあると考えています。複数の証券会社と提携が可能なIFAの方が証券会社に比べてもお客様の望みを叶えやすい状況にある一方で、採用の門戸は非常に狭く、証券リテール経験がなければ採用されないIFA法人も多くあります。
大手証券会社がFA制度を廃止した今、日本で証券に従事するには新卒で証券会社に入社する以外に方法は少なく、今後、証券にチャレンジしたいと思ってもその手法がなくなってしまうことを危惧しています。そのような中で弊社が未経験者の採用と育成をし続けていくことで、そのような方々にチャレンジの場を提供でき、日本のIFA人口を増やすことに貢献できると考えて、組織の拡大に取り組んでいます。
今後の拡大に向けてどのような方に参画いただきたいとお考えでしょうか?
「誠実さ」と「向上心」を兼ね備えている方ですね。証券リテール経験などは重要ではなく、この2点が重要だと考えています。私も未経験から証券業界に飛び込み、活動していたのですが金融リテラシ―さえ付けられれば、他のIFAと遜色無く活動することができると確信しています。他業界でも上記のものを兼ね備えている方であれば年収1000万円を目指せる環境を作り上げていますので是非、門を叩いていただきたいです。
また先程も触れていますが、証券ハイレイヤーの方々にも参画いただきたいですね。実は以前、証券会社でCEO賞などを受賞されている方から、弊社の参画を考えたいと相談をいただく機会がありましたが、エグゼクティブクラスなどの体制が整っておらず、その方の幸せを考えた結果、お断りした経験がありました。今となっては正しい判断だと思えますが、当時はとても悔しい思いをしました。その悔しさが糧となり現在は体制を作り上げることができたので、是非そのような方々にも参画いただきたいと考えています。
更に弊社では将来的な独立も推奨しており、弊社で培ったマネジメントや育成体制を広げていただき、日本に優秀なIFAが増えることに繋がるのであれば積極的に支援したいと考えています。
証券業界とIFA業界は今後どのように変化していくと予想されていますか?
証券業界は今後リテールの方がどんどん減少していくのではないでしょうか、こちらは日本の人口が減少しているという側面もありますが、IFAが今後拡大していく中で、証券会社所属のリテール職の分野をIFAが担っていく、という変化も起こると想定しています。今の証券会社のリテールとIFAのどちらが営業として優れているかという観点ではなく、保険代理店事業が全国に拡大したように、IFAのように複数の証券会社と提携し、お客様のニーズに合った商品サービスをタイミングが良いときに提供することの可能な業態が台頭して、お客様から求められるのは、IFAになるのではないかと確信しています。そうなると、証券会社は投資銀行部門に注力をしたり、商品を供給するサプライヤーとしての役割に注力したりするような流れになるのではないでしょうか。
最後に読者の方に向けてメッセージをお願いします
弊社は出来高制という刺激的環境で成功する為に皆で切磋琢磨していく会社です。そして、業界トップの会社を目指していく会社です。そんな刺激的な会社で働いてみたい方、「誠実さ」と「向上心」を持ち合わせていらっしゃれば、大歓迎です。
経歴
UBUNTU株式会社
代表取締役 倉成 雄介
中央大学経済学部を卒業後、元々アルバイトで勤めていた学習塾に入社。
教室長として、地元の町塾でありながら筑駒や開成などの超難関高校に
多数合格者を輩出。過去最高生徒数を更新。数々の社内表彰を受賞。
その後、野村證券に転職。法人オーナー、開業医、地権者等の超富裕層を担当。
資産運用のみならず、資産承継や事業に関わるビジネス、事業承継等にも精通。
資産拡大やMA等で社内表彰を受賞。真に顧客本位営業を求め、2020年に独立。
2021年、UBUNTU株式会社を設立。