金融サービス仲介業の創設について
2021年の秋冬頃に施行予定の金融サービス仲介業について見ていきます。
金融サービス仲介業
金融サービス仲介業は、銀行や証券会社、生命保険会社や損害保険会社などの金融機関と顧客の間に入って、金融商品やサービスの売買を仲介する業者を言い、新たに創設された業種です。
金融サービス仲介業創設の意図
これまでの仲介業では銀行なら銀行代理業者、証券会社なら金融商品仲介業者、保険会社では保険募集人や保険代理店として、提携した特定の金融機関の商品を販売する業務を行ってきました。 1人の顧客に預貯金や株式、生命保険に損害保険も総合的に仲介したいとなれば、それぞれの代理業者や仲介業者、募集人という4種類の資格を取得しなくてはなりません。 法改正によって金融サービス仲介業が創設された意図は、1つのライセンスであらゆる金融分野のサービス・商品を扱えるようにすることで、総合的なコンサルティングができるようにすることが挙げられます。 また、従来のような所属制の枠を廃止し、さまざまな金融機関の仲介ができるようにして自由度を増すことも創設意図です。
金融サービス仲介業の業務範囲
従来の金融商品販売法を金融サービスの提供に関する法律に改称することで、金融サービス仲介業が設けられました。 銀行・証券・保険と業態ごとの縦割りであった従来の仲介業と異なり、1つの登録であらゆる金融分野の商品やサービスをワンストップで提供が可能となります。 さまざまな金融機関の商品を取り扱えるよう、特定の金融機関への所属も求められません。 代わりに、取り扱い可能なサービスの制限や商品やサービスの購入代金の受入禁止、保証金の供託などの義務を設けて顧客の保護を図ります。
金融サービス仲介業と金融商品仲介業の違い
金融商品仲介業は1回の登録だけで銀行・証券・保険すべての仲介を行うことができる業態です。 また、特定の金融機関に所属する必要もないので、業界や個々の金融機関の垣根を超えて柔軟な商品やサービスのコンサルティングや提案が可能となります。 金融商品仲介業の場合、特定の証券会社には属さず、独立的で中立的な立場で資産運用のアドバイスを行いますが、証券に限られ、銀行や保険会社の商品の提案はできません。 特定の証券業者には属さないといっても、顧客はあくまでも委託元の証券会社と契約を締結するので、委託元の証券会社との結びつきは強いです。 なお、金融商品仲介業を営むには内閣総理大臣の登録を受けるとともに、日本証券業協会の外務員登録も必要です。 これに対して、金融サービス仲介業は1つのライセンスであらゆる金融業態かつ、あらゆる業者の商品やサービスを提案できるようになります。
想定されるビジネス
4つの業態の垣根を超えた提案ができるので、総合コンサルティングを謳うビジネスが拡大していくと考えられます。 これまでファイナンシャルプランナーとしてライフプランニングに基づく資産設計を提案していた方も、4つのライセンスを取得する必要なく、1つのライセンスを取得するだけで、コンサルティングから仲介までできるためです。 改正前の制度であらゆる金融業態を扱いたい場合には金融商品仲介業をはじめ、銀行代理業者、生命保険募集人や損害保険代理人と4つのライセンスを取得しなくてはなりませんでした。 金融サービス仲介業は業界をまたぐ参入障壁が低くなり、金融業界再編の後押しにつながることでしょう。