家族信託の価格低廉化と効率化、その大きな可能性とは
株式会社ファミトラの事業内容を教えてください。
ファミトラは、圧倒的な低価格で家族信託の組成をサポートする事業を展開しています。家族信託は非常に合理的で有効な仕組みであるにも関わらず、認知度が低く、これまで十分に普及してきませんでした。 様々な理由が考えられますが、その一つとして信託組成に於いてはアナログな仕組みが多い市場である事が要因であると感じています。そこで、ITの力を駆使することで効率化や価格低廉化を図り、家族信託という仕組みのコモディティ化を目指すべくサービスを開始しました。実際に今、あらゆるオペレーションについてIT化による効率化を図っており、少しずつ成果として現れてきています。 また、様々な関連業種との連携・提携が進んでいます。引き合いの多さに驚くぐらい、本当に色々なところから声をかけて頂いてありがたいと感じています。
主に、どのような企業や業界とのつながりが増えていますか?
主には、介護施設、保険、不動産、税理士業界のパートナーが増えてきています。またクレジットカード、銀行、証券系のパートナー様も提携の話を進めています。特に先日提携を発表した常陽銀行様とのニュースは日経新聞などにも取り上げていただき、更にそこから新規でご連絡をいただくなど、市場からの注目度が高い事がわかります。
これまで家族信託の対象でない方たちの受け皿になっている部分もあるかと思いますが、実際にはいかがでしょうか?
家族信託を組成するには資産規模に応じて高額な費用がかかるため、従来のターゲットは総資産1億円を超えるような富裕層とされてきました。そこで、我々は家族信託を誰にでも手が届くものにするために、ITの力を駆使することで徹底的な効率化を図り、従来の価格から1~2桁安い価格での提供を実現しました。その結果、世帯数でいうと、だいたい億超えの富裕層の10倍に相当する、3,000万~1億円くらいの総資産層の方にもサービスを提供できる状況になってきています。 他社が真似できないぐらいのところまで低廉化させて、家族信託といえばファミトラしかないという状態を作っていきたいですね。
ご経歴と「家族信託」に着目された理由を教えてください。
私自身はもともとITスタートアップの経営者、起業家でした。会社の事業が一区切りしたタイミングで、次に自分の人生をかけられる大きな領域を考える中で「シニア×IT」の事業領域に先駆けの可能性を感じました。AgeTech(エイジテック)と呼ばれていますが、高齢化が進む日本において今後革新が求められる分野であり、且つスタートアップ的なアプローチをしているプレイヤーが全然存在していないことに気付きました。 調べていくと、認知症による資産凍結対策の一つである「家族信託」という概念が非常に合理的で素晴らしい仕組みなのに、しがらみなどの問題で全く広がっていないことを知りました。そこでチャンスだと感じ、2020年3月に家族信託事業をスタートしました。
「しがらみ」とは、どういうことなのでしょうか?
例えば、厚労省による成年後見制度をより使いやすくしていこうとする動きが挙げられます。家族信託は成年後見制度を代替しうる仕組みであるにもかかわらず、こうした大きな流れにより、なかなか普及が進んでいないのが現状です。 また、旧来の家族信託の市場では「扱っている金額に対して何%チャージする」ということが基本の報酬概念なので、原価ベースの報酬という考え方があまりないということも挙げられます。一般的なサービスと比べてわかりにくく情報も少ないので、価格競争が全く起こってきませんでした。 せっかく良い仕組みがあるのに普及していないし、そもそも認知がされていない。でも逆に言えば、色々なオペレーションを効率化して、認知を広げつつ今までと全然違うアプローチで家族信託組成を広めていけば、勝ち筋があるのではないかと考えています。
サービスをパートナーさんと連携して普及していく考えは、創業当初からあったのでしょうか?
はい、当初からの戦略です。聞いたこともない概念を、我々のような無名のベンチャーがお勧めしても、そこに両手をあげて飛びつく人はいませんし、サービスの領域から考えても、信頼や安心、実績が評価されると思っていました。 中身の違いはありますが、外のセールスやブランディング、マーケティングの分野は、もともとお客様と信頼関係のある銀行様やお医者様、伝統ある企業様のほうが明らかに分があると思います。 そういう意味で、初動の段階では私たちは黒子でいいと考えています。弊社の認知度が広がり一定の成果を出し、お客様の信頼が得られた後に、弊社がダイレクトにバリューを出せるのではないかと考えています。toCは始めから表に出しつつも、実は、toBのほうが数字が作れるという思いで、始めから計画を立てて動いています。
IFA企業との協業について、どのような可能性を感じていますか?
IFA企業様は、先に説明した「しがらみ」などとは独立しているので、合理的な考えで意思決定をしていただけるし、スピードも速いイメージがあります。特にわれわれのようなサービスが始めにtoB、BtoCで広がるときには、すごく速く動いていただけるイメージを持っています。
IFA業界について、どのような課題や展望を感じていますか?
IFA業界は、扱っている商材が限定的なこともあり、その規模自体そこまで大きくはないと思っています。つまり、分散市場になっていて、お客様から見るとはっきりとIFAごとの違いが分からないのかなと。なので、いかに差別化していくかが大事で、扱える商品数と提案の幅がキーになってくるのではないかと考えています。未来のスタンダードになるような商品やサービスの提案を、圧倒的に早い段階できると良いのかなと思いますね。
これまで幾つかのIFA企業とお仕事をされてきたと思いますが、会社によって違いを感じたことはありますか?
はい、ありますね。IFAはブティック型なので、僕のイメージの中では少数のチームという感じです。チームの色は、そこのチームに属している人の色そのものです。動き方、スピード、説明のトーン、どのターゲットにどんな商品を提案するかなど、結構違うなと思います。
御社とよりシナジーがあるのは、どのようなIFA像になりますか?
弊社のサービスは幅が広いので、どんなお客様であってもカバーできる素養があると思っています。なのであまり相性は無いと考えています。ただ、資産形成層をターゲットにされているIFA様は、おそらく超富裕層向けの商品を提案できるラインナップが限定されると思います。そのようなIFA様の目線で考えると、弊社は提案できる商品を持っていますので、資産形成層をターゲットとするIFA様の方が相性がいいのかもしれません。
御社の今後の展望について、お伺いしてもよろしいでしょうか?
まずは2021年度中に、信託財産規模100億円を目指して日本で一番の状態にしたいです。さらに次の段階では、信託財産の派生ビジネスを具現化し、運用されている状態を目指します。そして、Agetech(エイジテック)の先駆けとしてマザーズ上場をし、一定の規模拡大をしていきたいと考えています。2030年には、認知症患者の総資産額が200兆円を超えるという統計が出ている中、1.2%のところをせめて5%程に、200兆円だったら10兆円程を信託財産に入れている国にしたいなと思っています。そこまで達成できたら、地方銀行様と同じくらいの社会的バリューは出せているのではないかなと思い描いています。それを10年後に目指すイメージで拡大させていきたいです。
経歴
株式会社ファミトラ
代表取締役社長 三橋 克仁様
2012年、株式会社マナボ(現 SATT AI ラボ株式会社)創業、代表取締役。
オンデマンド個別指導アプリ「manabo」のプロトタイプを自ら開発、
ベネッセ/Z会をはじめとする国内教育系大手企業各社との業務提携と累計6.2億円の資金調達を主導。
2018年に駿台グループに売却。
2019年11月、BCI(Brain Computer Interface)の商用化を見据え
AgeTech領域の事業を展開するBOSSA Technology Inc.(現 株式会社ファミトラ)を創業、代表取締役に就任。
Forbes 30 Under 30 2016 Asia選出などメディア出演多数。
東京大学大学院工学系修士課程修了