顧客本位に沿った、金融総合商社を目指して
これまでのご経歴を教えて下さい
平成20年度、前職の東海東京証券に入社しました。そこでは11年間勤務しています。最初の業務は営業が中心でした。3~4年目に個人セールスの表彰を取ることができたので、3カ月間、海外研修に派遣されました。海外に行くことで世界観が非常に広がったと感じています。帰国後は、営業を1年程やらせていただいた後に、富裕層部署の医療部門の立ち上げに携わりました。そこが自分の分岐点で、IFAをやっていこうと決めた理由となっています。
富裕層ビジネスでお手伝いした際に、お客様のご家族と関わる機会が非常に増えました。証券だけでは自分に興味を持ってもらえず、どういうふうにしたら自分と話をしてもらえるのかを勉強しました。ご家族のお悩みが非常に多いと感じたことがきっかけで、ご家族との関わりが増えたと思います。お子さまがいる方はお金がかかりますし、節税にも興味があります。院長先生に何かあった場合、家族や従業員、患者さんに対する不安があって、保険などの保障を考えている方も多くいました。
証券が第1順位で当たり前のように話をしていました。しかし、お客様、お客様の家族によっては、お金にまつわる優先順位が違うことを特に学びました。お客様によっては、資産を守りにいきたい方、保障が重要なんだという方もいます。もしくは、資産は形成できているので、多少リスクを取っても面白い世界に飛び込みたい方もいます。あとは、運用で増やすより相続対策で資産を承継したい方や不動産に興味があって、不動産を買いたい方もいます。お客様それぞれに合ったものを税理士や弁護士と連携しながら、ネットワークをつくることに楽しみを覚えました。
その後、前職を退職しIFAへと独立をしました。
IFAとして独立する決め手は何だったのでしょうか?
一番は、縛られたくないという思いがあったからです。やはり、ノルマであったり、商品が縛られたりすることが非常に多くなったので、お客様の悩みに耳を傾ける時間がどんどん削られてしまいました。前職のメディカル部門に携わり、お客様と目線を同一にして、資産を守っていきたいという、同じ考えや想いの持ったメンバーでやってみたいと思いました。
そして、IFAのことを調べてみると、自分が理想とする形を実現することが可能だとわかり、また日本で求められる世界だと感じたので、その世界をつくりにいきたいという気持ちが強くなり、独立を決めました。
IFAの存在は、いつお知りになりましたか?
前職のメディカル部門にいて、そこから2~3年経ったぐらいに興味を持ち始めました。実際に、スタートするまでには少し時間をかけて、勉強に励みました。すごく貴重な時間だったと思います。
創業の経緯とグループ会社という形態について、教えてください。
実際にIFAをされていた方とお会いしたのがきっかけです。
きわみアセットマネジメントには、コンサル部門があり、専属のコンサルタントがおります。また、保険や相続においては外部関係者とも連携しています。外部の、税理士や弁護士等とも連携しているのですが、お客様の相続税対策や事業承継対策に特化していく際に、外部に依頼すると少し時間がかかってしまいます。
自分の夢は、金融総合商社を確立させることです。お客様の悩みに対して、ワンストップですぐに提供できる環境を整えることが非常に重要だと思っています。お客様の優先順位は証券だけではないことを考えた上で、お客様個人、もしくはご家族の思いをワンストップで提供できる総合商社を創造することを目指しています。その中でも、税理士事務所と弁護士事務所は、法律が絡んでくることなので、外部で連携するのではなく、グループとして密に連携することになりました。
連携されている税理士法人は、中野様がお声掛けしたのでしょうか?
創業メンバーに信頼のおける税理士の方との繋がりがあり、そこからの出会いでスタートです。先方も、金融総合商社でワンストップでサービスをという考え方に対して、熱い思いを持たれている方だったので、そこが一致して今、こういう形でやらせていただいています。
僕たちは、「チーム」を大事にしています。1つのソリューション案件におきましても、「チーム」全体で考えています。税理士、弁護士も踏まえて、お客様を見守る世界として、どんどん拡大していきます。投資教育についても、教育コンサルができるものから、学校系などいろいろなところに繋がりが広がっていくと思います。商社の垣根はどこまでも伸びていくと考えています。
貴社の特徴を改めてお伺いしてもよろしいでしょうか?
長所は2つあります。1つは、メディカル部門があることです。スタートラインにしか立てていませんが、IFA初のメディカル部門に取り組んでいます。オーナーや個人の方々のコンサル部門があるのと同様に、医療専門の部門があります。その中で、我々営業マン全員が医療経営士の資格取得に動いています。証券だけではなく、相続対策として介護施設の建築、介護コンサルなどと連携しています。あとは、事業承継について、オーナー系、医療系、どちらでも対応できる世界をつくっています。
2つ目の長所として、商品のラインナップをいろいろな業者さんとの提携の中で作っています。今ある、きわみ税理士事務所、弁護士事務所との連携の中で、一番の強みは家族信託です。死亡後に相続対策をするのではなく、認知症前に対策を打つことが必要です。実際に、お客様からの「ありがとう」であったり、契約された方から「これで安心できた」というお声が聞こえています。日本は、これから高齢化が一気に進みますから、資産凍結リスクを考えたときのご家族の心配を1つでも解決できるような体制を整えています。これは、弊社の最大の強みだと思っています。
家族信託は、世間からの注目度が上がる前にもともと着目されていたのでしょうか?
私自身、前職で相続時の対策を多く打っていました。万が一のときの納税資金を準備するための保険や生前贈与などのお手伝いをさせていただいていたわけです。IFAを調べていく中で、課題が少し見えていました。IFAでは、前証券会社のときよりも密にお客様と繋がっていくことになります。一生涯、担当が変わらないということは、お客様の背後にあるリスクのことまで話をしなくてはいけません。そこから「家族信託」について、より調べるようになりました。一生涯お付き合いをしていく上で、切り離せられないテーマだと感じています。実際に、お客様は「考えてはいたけど、タイミングがなくて」とよくおっしゃっています。知識や準備を踏まえて話を聞きたいという方が多いです。なので、これからの日本にとって、家族信託は非常に重要だということは強く感じています。
IFA業界の課題と、金融業界全体の課題についてお伺いしてもよろしいでしょうか?
それぞれの金融機関が前進していることを非常に感じています。特に、IFA業界は、それぞれがいろいろな長所を見いだしてやっているので、IFAの方々の活動を見て、すごいなと感じる部分もあります。一方で気になる点はもございます。
1つは、手数料についてです。IFAでは、個人事業主のように自分だけで問題解決に取り組んでいく世界もあっていいと思います。ただ、手数料に特化されているIFAは非常に多いと感じます。本来、IFAは「お客様のために自分の人生を費やす」ということが背景にあって生まれたはずです。しかし、ご自身の収入のためにIFAをやっている方が散見されます。なので、その部分は全面的に改革すべきだと思います。 弊社はそのために、金融総合商社のように専門のチームと連携して価値を提供できる世界をつくりたいと思っています。
2点目は営業員の育成です。今でも「お願い営業」は、散見されます。お客様に合わせたライフプランの中での、「こうしたほうがいいですよね」「ああいうふうすると最善ですよ、リスクはこのようにカバーできますよ」というアドバイスとお願い営業は、やっていることも考え方も違います。ワンランク上の、普通の営業マンではない担当者として、お客様から誇りに思ってもらえる世界をつくりたいと思っており、そのための営業員の育成環境も整える必要があると思っています。
御社のように、チームとして全体収益を考えられる会社が増えていくとIFAがもっと良くなるのではないかと思います。IFA業界の展望をお聞かせください。
足元では、金融総合商社をつくっていきたいと思っていますが、対立をすればするほど、金融の世界との差は開いていくと思っています。IFAがどれだけもがいても、今の海外のIFAに追いついた頃には、海外のIFAはさらに進化しているはすです。AI化されて、担当者はまた少し違う形になっていると思います。ここ10年間の金融資産の統計によると、アメリカは3倍強の金融資産が増えています。一方日本は、1.5倍までもいかなかったのが現状です。金融の考え方が変わらなければ、国は潤いませんし、お客様自体も喜べない状態になってしまいます。日本の金融が世界で1番を取るのは厳しいと思います。でも、志として持つことは悪くないと思っていますので、どうせやるなら、新撰組のような金融維新ではありませんが、金融改革・金融維新で日本の金融を最先端に進めることはやってもいいと思っています。
実際、金融維新は可能なのではないかと考えています。日本は超少子高齢化社会です。対処することを何も考えなければ、大相続時代を乗り切ることができないと思います。金融営業マン1人で、1社でなんとかなるかというと、それは有り得ないと思います。従いまして、全員でその部分に対応する必要があります。証券だけではできません。金融総合商社が今後、必要になってくると思うので、その中の金融部門は、自分たちのIFAだけではないところとも一緒に考えてやっていける世界ができたらいいなと考えています。
今後の貴社のビジョンをお聞かせください。
今、メンバーは7名で構成されていて、東京と名古屋にオフィスを構えています。今後、全国展開を視野に入れています。メディカル部門系があれば、オーナー系もあります。また、農家さんもいれば、一般の専業主婦もいて、個人事業主の方もいます。その方々によって、その方ならではの問題があると思います。また、高齢化が進めば、M&Aも入ってくると思います。自分たちのお金が見える化できるように、流動的になるようなお手伝いを全国展開を通じてやっていきたいです。なので、まだまだ人員が少ないのが現状です。経験がなくとも、思いを強く持っている方であったり、今までできなかったけど前に進めてみたいという思いがある方。そういう方に関しては、協力体制を持った上でぜひ一緒に働けたらと考えています。 そのためには、税理士事務所や弁護士事務所以外にも士業の方々やその他金融機関、不動産など、みんなで力を合わせてやっていける提携を進めていきたいです。
経歴
きわみアセットマネジメント株式会社
取締役 中野 元様
東海東京証券株式会社入社。
優績者のみが選抜される海外修練制度により米国派遣。米国アナリストのもと、企業分析を習得。
帰国後、富裕層関連部署にてPB業務を経験。
令和2年、きわみアセットマネジメント株式会社設立。