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インタビュー

「市場中立型ヘッジファンド」が作る、 IFA×顧客×証券会社の三方よしの関係性

INDEX目次

御社の概要について教えてください。

エアーズシー証券について、「外資系の証券会社ですか?」と言われることがありますが、弊社は2003年に設立された証券会社で、2023年で20周年を迎える意外と歴史のある会社です。設立当初は総合証券会社として、株式などの有価証券の売買の取次や引受、ディーリングを行っておりました。
その後、金融ビッグバンによる株式委託手数料の自由化を受け、中小規模の証券会社が生き残る道を模索していました。その中で、弊社の経営理念の一つである「金融商品マーケットに変革を起こそう」を実践するため、2011年に金融商品開発部を新設し、欧米の金融商品を検証する中で、ヘッジファンドを専門に取扱う証券会社として再スタートしました。 2011年にファンド1号の取扱いを開始しましたが、日本の金融のレギュレーションは険しく黒字にならない厳しい時代は長く経験しましたが、2019年に海外パートナーとの協働でファンド2号の取扱いを開始しました。このファンド2号は当時全米で資産規模では上位の運用会社のヘッジファンドで、名実ともにヘッジファンドを取扱う証券会社となり、現在はファンド7本、残高200億円を達成しました。
日本の金融のレギュレーションの中で、弊社にとって一番大きなハードルは、いかに販売するか、でした。良い商品は宣伝しなくても売れることは理屈ではわかりますが、その良さを理解していただかなければ、やはり売れません。その良さを理解していただくために広告や宣伝をするのだと思います。良さを皆様に知っていただくことが大切です。その時に、弊社にとってもう一方のパートナーがIFAの方々でした。ですから、現在、20者以上のIFAの方々と協働しております。

狩野さんのご経歴について教えてください。

私は、バブル形成初期の1985年に大阪に拠点を置く和光証券(現みずほ証券)に入社しました。当時は「株の和光」と言われており、入社当時はまだ児玉富士男氏が健在でした。 1985年は日本の株式市場において大きな転換点だったと思います。
1980年代前半はアメリカにとって苦しい高インフレ時代でした。高金利は20%を超えておりました。世界の投資資金はアメリカに流入し、極端なドル高となっておりました。自由貿易を守るため、先進5か国はニューヨーク市のプラザホテルに集まり、協調介入や金融政策などで各国がドル高是正の協調政策を取ることが合意されました。いわゆる「プラザ合意」の年です。そして、円高を期待して外国人投資家が日本市場へ参入し、存在感は増大しました。日本市場も国際化が始まりました。
1987年2月には日本電信電話(現NTT)が上場、1988年には大阪取引所に日経平均株式先物が登場、取引が開始されました。そして日本株式市場は1989年12月29日、3万8957円44銭の最高値を付け、バブルの絶頂を迎えました。
私は和光証券から新光証券、そして、みずほ証券と、25年間証券会社に勤務しました。私はディーラーやファンドマネージャー以外はほとんどの業務を経験しました。個人営業、法人営業、機関投資家営業、株式営業、債券営業、デリバティブ営業、公開営業、引受営業などです。その後、信託会社に7年ほど勤務し、2019年8月に現在のエアーズシー証券に入社しました。金融業界に従事しては37年になります。

ヘッジファンドとは具体的にどのようなものなのでしょうか?

私はファンド(投資信託を含む)にはリスクを前提にして考えると、大きく3つの分類があると考えております。まず、指数に連動し平均的な市場リスクを取りながら市場リターンの獲得を目指すファンドで、具体的には「インデックスファンド」や「ETF」。
次に、市場リスクと同等程度のリスクを取りながらインデックスを上回るリターンを目指す「アクティブファンド」です。そして市場リスクをヘッジ(回避)する、つまり、市場リスクの上下動を抑えてリターンを目指すのが3つ目の「ヘッジファンド」です。
少し歴史的なところをお話しますと、初めて「ヘッジファンド」という言葉を使い、運用を始めたのは、1949年アルフレッド・ウィンスロー・ジョーンズ氏です。当時ニューヨークでは、リスクを管理することをヘッジと呼んでいて、要は売りと買いを合わせたら市場リスクというものはある程度ヘッジ、つまり、管理できるのではないかと考えたのです。日本に投資信託が普及する以前のことです。既にアメリカではそのような運用が行われていました。
このように、ヘッジファンドの歴史は意外に長く、現在では4兆ドルのヘッジファンドが運用されていますが、日本では、未だに「ヘッジファンドは危ない、怪しい」と見られがちです。金融アドバイザーであるIFAの方にもそうおっしゃる方もおられます。
普通に考えれば、そのような怪しい金融サービスが、70年以上も存続することは出来ないと思いますし、むしろ、米国では、IFAにとって有名なファンドにアクセスできることは彼らのステータスとなっております。
しかし、「危ない、怪しい」と言われてしまうのは、ヘッジファンドが、他の投資信託と違って、私募形式で限られた人しかアクセスできず、情報の公開も限られているからなのかもしれません。ヘッジファンドは具体的な運用方法や個別の保有銘柄は公開しません。組み入れている銘柄を公開するのは、ファンドのリターンの源泉を明かすことにもなりかねないからで、大変なリスクです。ここが一般的な公募のものと違うところです。
ここ最近の金融業界のトレンドの中で、AI運用というものがありますが、ヘッジファンドの仕組みに近いものがあると思います。AI運用も最も重要なAIの運用モデルなどの中身は公開していません。
ヘッジファンドの仕組みをしっかり理解していただければ、このような誤解も解けるのではないかと思っていますし、啓蒙活動も実践しております。

日本では御社がヘッジファンド取扱いの先駆けとなるのでしょうか?

以前から機関投資家はいろいろなファンドを購入していたと思いますが、少人数私募という形で、金融リテラシーが比較的に高い個人投資家に対して10万米ドル以上の投資金額でヘッジファンドの提供を始めたのは弊社が初めてだと思います。

それまでは、投資家が購入するルートは非常に限られており、直接、運用会社に買いに行く方法しかありませんでした。しかし、一見(いちげん)のお客様は直接コンタクトしても取扱ってもらえません。現在は、規模も大きいヘッジファンドも国際的な金融の組織下に置かれているので、どこの誰のお金だか分からない、一見のお客様には投資できないのです。 ファンドのことをよく知っている人やゲートキーパーと呼ばれる人たちが、「この人の資金は大丈夫だ」と、ファンドに紹介し、ファンド側が受け入れることで投資が可能となります。つまり、一般投資家が買えるルートはほとんど存在しなかったのです。

弊社は2011年に私募の外国証券として金融庁に届け出て、49人の募集枠で取扱うという、今まで日本にはなかった仕組みをつくりました。

御社が提供される商品にはどんな特色がありますか?

少し業界の話しをしますと、実は、ヘッジファンドというものは年間に数千本誕生します。 われこそはと思う運用者が知人、友人から集めたお金をシードマネーとして市場に参入して運用を開始します。運用がうまくいくと、もっと大きな資金で運用することを考え、米国のSEC等に登録して、多くの投資家からもっと資金を集めます。規模が大きくなれば成功報酬も大きくなりますが、運用力はトレードオフの関係で、大きなリターンが取れなくなります。100億円ファンドを10%で運用することと、1兆円のファンドを10%で運用することは次元の違う話になります。
しかし、新しいファンドは、多くの投資家から資金を集めるところまで、なかなか生き残れません。半年程度で半分前後のヘッジファンドは淘汰され、その後年数が経つにつれて本数は減っていきます。その間も新しいファンドは世に出てきます。ヘッジファンド業界の新陳代謝は激しいです。しかし、長期のトラックレコードを持っている、言い換えれば、何年も運用を継続しているファンドは、マーケットの厳しい時も切り抜けて実績を残しているわけです。2年で60%以上のリターンを出したからと言って信頼性は直ぐに生まれるとは限りません。10年間平均6%で安定的に運用している方が、市場の信頼性は高いと私は考えております。
ですから、当社の商品は、長期で安定的にリターンを上げる運用実績を持っていることが特色になります。長期資産形成のためのファンドというコンセプトで組成に取り組んでおります。

ちょっと話が変わりますが、どうして、そんなファンドを日本で、しかも小さな証券会社が提供できるのか?疑問を持たれると思います。
それは、弊社がこのファンドビジネスを協働して実行できる海外パートナーとめぐり合ったからです。弊社の概要でも触れましたが、2019年に米国でも運用規模で上位のヘッジファンドを第2号として日本で組成できた時のお話しです。
その海外パートナーが日本でヘッジファンドビジネスを展開するため来日した当初、大手証券会社をはじめ東京中心に十数社の証券会社を訪問したそうです。話を切り出すと、私募で扱わないと無理だから、と多くの証券会社では担当者レベルで断られたそうです。
そこで、東京を諦め、香港に向かうため同業者に連絡したところ、その同業者からヘッジファンド1本で営業している証券会社があるという話を聞き、折角なので最後に行ってみようということで、先方からコンタクトがあり弊社に来社されました。
ヘッジファンドだけで証券業を営んでいる物好きな証券会社がある、と言われてきたとのことで、半信半疑だったのでしょうが、弊社では私募で取り扱おうとしていたので、当社としては渡りに船で、すぐに、ビジネスとして協働してファンド組成に取り組みました。弊社のような知名度のない証券会社が取扱えるようなファンドではなかったのですが、それを結び付けてくれたのは、日本でヘッジファンドに10年以上地道に取組んできた結果だ、と弊社の先人の業績に感謝しております。
また、この海外パートナーも、当初、本当に販売できるかどうかは不安はあったと思います。しかし、弊社と組んでいただいているIFAの皆様が協働してくださり、ここでもよきパートナーの絆を感じております。

ヘッジファンドを使ったポートフォリオ形成のメリットはなんでしょうか?

富裕層にとって、実物資産である不動産が欠かせない運用資産となっているのと同様に、欧米ではヘッジファンドも資産運用時のリスク分散の観点からポートフォリオに組み入れられているのが一般的です。
先ほども触れましたが、市場の上げ下げするリスクを抑えて安定的なリターンを目指すのがヘッジファンドです。つまり、株価が大きく下がり元本割れとなったとき、市場がダウントレンドの時に資産価値が減価しないような市場中立的な運用、これが一つ目のメリットとなります。
ヘッジファンドはインデックスファンドやアクティブファンドと違って市場全体の値動きとの相関が低いのです。オルタナティブ運用等利用していないような投資信託の多くの場合は、相場の上げ下げに連動するので、市場が回復しないと回復しません。言わば、正の相関です。しかし、ヘッジファンドは、伝統的な有価証券との相関が低く、無相関に近いものもあります。将来のことですから、絶対はないのですが、これがよく言われる「絶対的リターン追求型の運用」です。
また、ファンドマネージャーにとっては、自己資金を投入していますので、運用成績が上がらないと自分の財産は増えないし、成功報酬型ですから、実績を出さなければ報酬は出ないのです。そのため、収益が上がるように運用するのは当たり前です。このようなプロにお金を預けるということが、二つ目のメリットです。
そして、三つ目のメリットはプロが運用する長期運用を前提にしておりますので、あまりリバランスする必要はないということです。しかし、運用会社の運用力は長期で見ると巧拙は出てきます。常にトップの運用を維持することは至難の業です。運用会社の選定は、アセットアロケーションの観点から最重要な課題です。金融アドバイザーの力量はこのアセットアロケーションにあると私は考えております。

ヘッジファンドを提案する際のポイントはありますか?

私は日本人の金融リテラシーは高いと思っています。しかし、投資家の志向性としては、日本人はリスク回避型なのです。もともと、日本は単一民族による農耕社会なので、安定的に生産さえできれば収穫には困らず、大きなリスクとしては天候リスクくらいなのでしょう。 また、農耕社会では共同で作業することが多く比較的に貧富の差が生じにくかった。だから、日本人は比較的リスクを取らない、リスク回避型が多いのでは、と思っております。預貯金でずっと置いておけばいいじゃないかと考える。

他方、欧米のような多民族の狩猟社会では、リターンを得るためには積極的にリスクを取る必要があります。だから欧米人の投資スタイルは、リスク選好型とか、リスク中立型とかがみられるのでしょう。そして、その成功者は称賛されるのです。英雄です。しかし、その成功者は本当は少数かもしれないのですが…

日本では20年以上もデフレが続いている中で、リスク回避型も賢い選択だったと思います。この先も金利がマイナスの時代が続くならそのままでもいいかもしれません。しかし、インフレの時代になると、持つものと持たらざるものの差は長期に及ぶと大きくなります。日米の個人金融資産の差は60年後には24倍になります。その差を埋めるためには、持っている金融資産を運用しなければならない。
米国人のインフレ恐怖は今の日本人にはないのです。狂乱物価と言われた1970年代を経験した先輩方は給料も相対的に上がりました。 今後、日本人も欧米のようにリスクを取らなければならなくなると思います。とはいえ歳をとってくればリスク許容度が低下します。そういったリスク低減のため、市場中立型のヘッジファンドはリスク回避型の日本人に非常に合っているのではないでしょうか。

弊社のヘッジファンドを、これからマーケットリスクをとる日本人が運用を考える上で、ポートフォリオに組み入れていただくことで、全体のリスクを少しでも低減できれば、と思っております。これから、ジャパンマネーが国際的な金融の世界で存在感を増していくと私は見ております。預貯金に眠っている資金や企業が蓄積してきた内部留保は世界の金融市場でジャパンマネーとして活躍するときが来ると思います。国際分散投資においてもヘッジファンドは有効な提案だと考えます。

IFAの方に向けて一言お願いします。

我々は、コンサル型のIFAを目指している方々とともに三方よしで、これからも手を取り合っていきたいと思っています。
三方よしとは近江商人の考え方です。
滋賀大学宇佐美名誉教授によれば「『売り手によし、買い手によし、世間によし』を示す『三方よし』という表現は、近江商人の経営理念を表現するために後世に作られたものであるが、そのルーツは初代伊藤忠兵衛(伊藤忠商事創業者)が近江商人の先達に対する尊敬の思いを込めて発した『商売は菩薩の業(行)、商売道の尊さは、売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの』という言葉にあると考えられる。」とのことです。自らの利益のみを追求することをよしとせず、社会の幸せを願う精神のことです。
そして、その三方は弊社のビジネスとっては、ファンドをご購入されるお客様であり、IFAであり、弊社です。この三方に利益がなくてはならないのです。
IFAの働き方として、売買を中心としてやっていくことも個人的にはアリだと思っています。私は、失われた30年間証券マンでした。最終的に喜んでいただいたお客様は何人いたのか。転勤等で担当の期間はまちまちですが、長くて5年でした。しかし、IFAの皆様は生涯お客様の資金運用に携わらなければなりません。しかし、お客様の利益を最大限に考え、IFAにも安定的に報酬が入ってくる金融商品は果たして存在するでしょうか?
資産を回転されることで、お客様から手数料を頂いてお客様の利益は無し、では話になりません。しっかりアセットアロケーションすれば、資産の回転率はかなり低下します。他のコンサルもできます。弊社と提携していただいているIFAの方々は、保険や不動産なども取扱うなど、兼業している方も結構多いです。総合的にお客様の資産運用をやっている方がほとんどです。私はこれが本当の金融アドバイザーだと思います。決して、証券営業マンにはならないでほしいと思います。

今後、IFAの方とのパートナーシップをより拡大していきたいと思っています。 IFAとそのお客様と弊社と「三方よし」で、手を取り合っていきたいと思っていますので、ヘッジファンドにご興味のある方は、是非、お気軽にお問合せ下さい。

経歴

エアーズシー証券株式会社  

取締役営業本部長 狩野純一様

1985年に和光証券(現みずほ証券)に入社し、新光証券、そして、みずほ証券と、25年間証券会社に勤務。 個人営業、法人営業、機関投資家営業、株式営業、債券営業、デリバティブ営業、公開営業、引受営業など幅広く業務に従事。その後、信託会社に7年ほど勤務し、2019年8月に現在のエアーズシー証券に入社。