インタビュー記事

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世界基準のIFAである「RIA」の日本での普及を目指す


RIA JAPAN おカネ学株式会社
代表 安東 隆司様

これまでのご経歴について教えてください。

新卒で三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行しました。 そこで17年余り仕事をしてきて、残念ながら、お客さまのためにならないノルマもありました。それを払拭できないかと思っていました。私自身が自分の親に勧めたくないものをお客さまに勧めるのは失礼な話ですよね。銀行のイメージは、お客さまのためになる仕事と思っていましたが、ふたを開けてみたら、必ずしもそうでもありません。支店や上司のカラーにもよりますが、全員がお客さま本位に動いているわけではないと、銀行に勤めて気付きました。 ノルマに縛られず、お客さまのためになるビジネスはないかと思い、まだ日本にプライベートバンキングという言葉が根付いていない頃に、 会社に「プライベートバンキング部門」の立上げ提案を行いました。 プライベートバンキングの真髄は、本当にお客さまのニーズがあるときに、ニーズに応じたソリューションを提供することだと思いました。 そのテストケースを私自身がやらせてもらうことになりました。 その地域の富裕層のお客さまに喜んでいただくサービスを提供することが私のミッションでした。商業銀行が持っている預金・ローン・保険等だけではなくて、不動産のニーズ、遺言信託のニーズを全てできるようにメガバンクを信託銀行化したらどうかと当時提案しました。その頃から12年が過ぎ、世の中の銀行がその方向性で進んでいるように感じています。当時から、富裕層にとって心地のいいサービスを提供したいと思っていました。 アメリカのメリルリンチと折半でプライベートバンクがスタートすることになり、私が出向し担当させていただくことになりました。アメリカ系なので、手数料ビジネスが中心でしたね。その後、2007年からフランス・ソシエテジェネラルのプライベートバンキング専業の信託銀行であるSG信託銀行に入社しました。金融業界26年を経験した後、RIA JAPAN おカネ学(株)を2015年に会社を立ち上げ独立しました。

どのタイミングから投資助言、アメリカのRIAを検討されていたのでしょうか?

2007年からフィービジネスには慣れ親しんできました。現在やっていることは、信託銀行でやっていた信託報酬という「フィービジネス」を、投資助言業で投資顧問報酬に置き換えた形と言えます。

RIAが日本で普及しない理由はどんなことが挙げられるのでしょうか?

お客さまが、アドバイスに対しての対価を支払うカルチャーがないことが大きいと思います。私は、1994年からFPをやっていますが、ファイナンシャルプランニングに対しても、お金を払うカルチャーがないと感じています。もう一つは収益構造が低いことです。富裕層のお客様に信頼していただかないと事業として成り立たないんですね。弊社の場合のフィーは、年率で1%弱です。仮にRIAをやろうと思ったときに年収1,000万円をもらいたいならば、コストを全く考えず単純計算で10億円の契約額が必要となります。10億円のお客さまがいらっしゃって、1%で1,000万円になります。

RIAをやりたいけれども、自分の担当しているお客様の契約資産から、いくらお給料がもらえるか考えると、そこまでの金額規模のお客さまと契約できる担当者が少ないことが日本のIFAには実情としてあるのではないでしょうか。 弊社に入りたい方がいらっしゃればウエルカムで、そういった相談もあります。 仮に弊社に勤務していただく人には、将来支店長をしていただく前提です。コストマネジメントも当然できなくてはなりません。家賃、税金、弁護士さんの費用、交通費、交際費などのコストをどうするか考える必要があります。その上で、「あなたのお客さまの中で、いくら収益ができて、その中で自分の給料はいくらが妥当だと思いますか?」と質問、計画の提出をリクエストします。この質問の後で、大抵就職希望者からの連絡は止まってしまいますね。結局、自分ではできないと思われるのでしょう。今の時点の富裕層サービスでいえば、アメリカでも1%ぐらいのフィーです。日本では投信を売れば3%で、信託報酬からのキックバックも期待できます。仕組み債を作れば5~10%の収益がもたらされます。それらと比べると、1%のビジネスは収益性が低く、ハードルが高いです。せっかく就職しても、自分の力で生きていくだけのものが作れないということでしょうね。

アメリカと日本のRIAの違いを教えてください。

日本での投資助言業者は、お客さまの注文など口座には一切タッチできません。私が助言を出しても、お客さま口座で約定したのか、そもそも注文を出したのか、それが分からないのです。お客さま等に開示いただかないと分からないのです。 アメリカでは、プラットフォームが整っており、証券会社の方でオーダーが出せる手前のポータルのところまでは開示していいというスタンスになっていると思われます。日本でもそれを認められると、顧客との意思疎通がスムースになります。お客様口座の残高や口座状態にはアクセスでき、発注はできないように、別のパスワードで管理しているケースが日本でもあると思います。お客さまの残高管理のために、保有資産状況にアクセスできて、約定したか、保有資産は何を何株持っているかといった状況をRIAに開示できるようにネット証券に認めてほしいと希望しています。

投資助言業の実情を教えてください。

日本で投資助言業を立ち上げるのは非常にハードルが高いと思っています。 われわれ投資助言業では現状、保証協会付融資の対象外になります。つまり、借り入れができないことがほとんどです。なので、従業員を増やすことも、自分たちが会社で上げた収益から出さなくてはなりません。去年、保証協会の対象業種にしてほしいという提言をしました。2020年12月8日に閣議で了承されています。投資運用業と投資助言業が保証協会の対象業種になれば、今後は銀行など金融機関からの借り入れがスムースになるはずです。投資助言業の登録に際しては、分析・コンプライアンスなどについて十分な態勢を整備していることが必要です。これらの要件を兼ね備えた企業が財務局長から登録を受けることができるのです。仮に営業・分析・コンプライアンスを3人の担当者で分担し、3人それぞれが年収1,000万ずつで、助言業を行うならば、報酬率1%ならば契約金額が30億ないと経営が成り立ちません。営業以外の人はお客さまは持っていませんので、なかなかビジネスになりづらい面があるのです。 残高に応じたフィー体系が顧客ファーストであると思っています。今後制度面で助言業を後押ししてくれると普及が進むと思います。

安東様も助言業立ち上げの際に苦労されたのでしょうか?

大変でした。助言業の登録を受けることは、本当に難しいですね。証券会社のトップセールスの営業マンが助言業の登録を取れるかというと、その人はコンプライアンスマインドは大丈夫なのか、リスク管理できるのかなどがクリアにできないと、例えば詐欺事件が起こってしまいます。レバレッジを効かせれば表面上は営業成績が良く見えますが、逆方向にいった場合にお客様の資産に大きな影響がでます。更に経営の危機も予想されるでしょう。そういうリスク管理、経営管理は、営業を担ってきた人には苦手な分野であることが多いと思います。 私は、もともと銀行で貸し付けの責任者をしていたので、リスクに対して非常に過敏です。トップ営業マンにバランスの取れた人材が少ないと感じます。コンプライアンス専門を方を別に雇ったとしても その方の給料を、残高×1%の中から補う必要があります。 日本の企業でプライベートバンカーをやっていたと言っても、会社の看板でお客様と付き合ってきた人が多いです。独立や転職してから、「こんなハズじゃなかった」と感じるケースも多いのではないでしょうか?外資系のプライベート・バンカーでクビにならずに数年の経験のある人は、お客様から信頼を受けている実績があると思います。自分でキャリアを築いてきた人以外には、投資助言業RIAは現状ではハードルの高い職業であると思います。

安東様はどのような助言の方針ですか?

相場は良いときも悪いときもあります。ざっくり言うと、年率で3.5%ぐらいの運用を目指しています。過度なリスクを取らない地道なスタンスで提案しております。 私は海外ETFを中心としてテーラーメード型のグローバル運用を提案しております。海外ETFや海外株式、REITなど運用コストが低く、パフォーマンスが安定している商品の助言をしています。お客様のニーズ、リスク許容度を加味しポートフォリオを作成します。 「プライベートバンカーだから年率10%ぐらいのリターンが出せるだろう」と言われることがあります。しかし金利が0%前後のマーケット環境で年率10%を継続的に出すのは非常に難しいと思っています。 お客さまに無理をさせて、自分の成績を上げることは愚の骨頂だと思っています。

日本のIFA業界の課題について、どのようなことが挙げられますでしょうか?

世界でいうIFAと日本のIFAで若干ミスマッチがありますよね。世界のIFAでは、仲介業だけではなく、助言業を持っているRIAもIFAと言われている国(イギリスなど)があります。日本の投資家の方は、イギリス型のイメージを持って日本のIFAを見ているので、そこにはミスマッチがあります。実際にうちに相談があった方で、あるセミナーでIFAを勧められて、お付き合いしてみたら結果的に非常に高いコストの投資信託の銘柄を買わされたと聞きました。本当の意味でのアドバイザーではないですよね。

日本の課題は、アドバイザーとは何だ? ということです。アメリカやイギリスでは、投資助言登録を持つ人がアドバイザーで、それ以外の人はブローカー、仲介者です。そこが日本でもクリアになると良いですね。世界のスタンダードとしては、アドバイザーとブローカーはきちんと分けられていて、RIA登録のない人はアドバイザーを名乗ってはいけないとSECが示達しています。そこが日本の大きな課題だと思います。日本でも(広義の)IFAは販売者を卒業し、RIAとなることが顧客本位を実現するひとつのゴールだと思っています。

次の課題は、手数料を全面開示することです。モデルケースを挙げて全体のコストをきちんと顧客に開示すべきだと思います。実は金融庁にも提言しましたが、まだまだ日本では顧客本意ではありません。ファンドラップの手数料や仕組み債の組成費用、外貨の両替手数料などを含んだトータルのコストを全て開示すべきだと言いました。これを開示すると、お客様が日本の金融機関にいくら費用を払うのかが分かります。そして、私どもフィーベースの報酬率が実はすごく安いことがクローズアップされると思います。世の中で情報開示が進み、お客さまが手数料などで5~10%を取られていたことに気が付いくと、アドバイス料の1%を払うことに対して高いと思わないのではないでしょうか。

また、金融庁は、地場証券モデルはもう崩壊しているとの過去コメントがありました。今後の生き残りを図る戦略のひとつがRIAモデルだと思っています。低金利下では、銀行融資の収益性は限られます。生き抜くために、保険を売ったり、高い手数料の金融商品を売ったりする場合が多いと思います。 できれば、地方銀行や証券会社が業態転換する中で、ファンドラップや、証券仲介業ではなく、フィーベースのRIAモデルを一緒にやれたらいいなと思います。

最後に御社の今後のビジョンをお伺いしてよろしいでしょうか?

世界基準のIFAであるRIAを広くに日本に普及させること、投資助言のサービスを広く認知してもらって、「金融機関に騙された」と感じる人を減らしたいと思っています。 RIA JAPANは顧客本位のビジネスを目指しています。販売者(ブローカレッジ)ではないアドバイザーも日本にいることを知ってほしいと思っています。 顧客本位を目指す志を持つ人が入社してくれたらいいのですが、おそらく外資系PBで経験を積んだ人でないと、難しいかもしれません。 報酬率1%のビジネスは契約の規模が大きくないと成り立ちません。弊社が現在、富裕層に特化している理由はここにあります。 弊社は弊社のお客さまを守るために事業を継続しなくてはいけません。 先行投資の金融人材育成に難しさを感じています。

しかし、富裕層以外の人の金融経済教育をどうにか何かの形でやらないといけないと思いました。iDeCoの本を出したり、金融機関に騙されないで低コストのものを持とうと発信しています。シニアの資産運用や金融資産運用論の講義もやっていました。私の会社は、和名が「おカネ学株式会社」ですが、この意図はお金に対する学問をぜひ身に付けてほしいと思ったからです。英文略称は「RIA JAPAN」です。投資助言業のRIAはRegistered Investment Adviser、つまり登録された投資アドバイザーです。弊社のRIAはReliable Investment Advisors、つまり信頼できる投資アドバイザーの略称です。ビジネスとして成り立たせるために現状は富裕層がターゲットではありますが、それ以外の人にも金融リテラシーを広めたいと思っています。夢は、パーソナルファイナンスを大学で教えたいと思っています。

経歴

RIA JAPAN おカネ学株式会社
代表 安東 隆司様
1989年 立教大学社会学部卒業後、三和銀行へ入行。(現 三菱UFJ銀行) 三菱UFJメリルリンチPB証券に出向後、2007年よりフランス・ソシエテジェネラルのプライベートバンキング専業の信託銀行であるSG信託銀行に入行。(現 SMBC信託銀行) 日系銀行、米国系証券、欧州系信託銀行でプライベートバンカーとして15年、金融業界26年を経験し独立。 2015年8月 おカネ学株式会社を設立 代表取締役に就任。 日経CNBCなどで解説するTVコメンテーター。 CFP®ファイナンシャル・プランナー他資格多数。 著書に『元メガバンク・外資系プライベートバンカーが教える お金を増やすなら この1本から始めなさい』(ダイヤモンド社)、『iDeCo+NISA・つみたてNISA プロの運用教えてあげる!』秀和システムなど