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インタビュー

組織作り、資金繰り、業界展望の観点から考える、 IFAとして個人が成長し続けるための経営手法

INDEX目次

最初に証券会社を選択された経緯を教えてください。

実は最初はプロ野球選手を目指していまして、大学まで野球一筋で勉強に力を入れて取り組んだことがない学生でした。ケガをきっかけに引退を決意し働こうと考えたのですが特にやりたいことが無いことに気づきました。そんな中、お金に関して学んでおけば将来きっと役に立つだろうと思い、証券会社の選考に進むことを決めました。平成17年にFAとして日興證券に入社をして、商品やマーケットについての勉強に翻弄されながらも、営業に奮闘するような毎日でした。いざ勉強を始めてみると商品の仕組みやマーケットの動向に面白さを感じ、常に知識を蓄え営業に活かしていきました。私の性格的にも商品を理解していないまま、お客様に提案を行うことは良くないと感じていましたので、会社から情報が共有された際には自分なりに落とし込み、提案を行っていました。

IFAとして活動をされることになった背景を教えていただけますか?

月並みかと思いますが、証券会社では商品ありきの提案になっていたこと、会社自体も銀行色が強くなってきたことが影響しています。お客様の必要とされている商品の提供を行っても評価に繋がりにくいなど、どちらかと言えばネガティブな要素もありましたが、お客様の必要としているものを提供したいと思ったことが大きな要因かと思います。多くのIFAも同様の考えではないでしょうか。

実際にIFAとして活動されて、参入前とのギャップはございましたか?

起業までは入念に準備を行いましたので、実際に活動を始めてみると企業ブランドによる差やIFAという働き方に対してのギャップは特にありませんでした。むしろ、もっと早く始めていれば良かったなとさえ感じました。退職にあたっての引継ぎ準備、お客様へのご挨拶などは一点の曇りもないと言い切れるほど、こだわって行いました。また、証券会社時代に担当させていただいておりました50名様のうち、49名様が独立の際に引き続き任せたいと今でもお付き合いをさせていただいており、人としての信頼関係が大切だと気づかされたくらいです。大手の看板があり、沢山のお客様と関われることは確かにありますが実際に資産をお預かりさせていただけるかどうかは人間力次第ですよね。

経営面でのこだわりを教えていただけますでしょうか。

4点ありまして、1点目は「自分自身がプレイヤーであること」です。
経営者自身がIFAとして1人で生計が立てられる姿を社員の方に見てもらいたいですし、私の経験した成功事例を共有することで、会社全体に少しでもいい影響を与えられるようにしています。今でも150名のお客様を担当させていただき、IFAとして独立した後に100名ほどお客様が増えている状況です。経営に全てを振り切ってしまうとマーケットの中で私の存在価値がなくなるという思いもありますし、何よりも自身がお客様との関わりを大切にしているので、今後もプレイヤーであることはこだわっていきたいです。

2点目は「働きやすい環境作り」です。
毎日1番早くに出社して、所属されているIFAのお預かりに変動がないか全てチェックし動きがあれば、すぐにLINEや電話などでヒアリングを行っています。情報の共有も兼ねていますが、社内でのコミュニケーションを増やし、活動しやすい環境作りに繋がることを目指しています。一緒に働いていただくので少しでもいい環境を作ることができれば、成果にもつながるのではないかと感じています。業務委託での雇用だからと言って、活躍できなければ、すぐに関係が終わってしまうような悲しい関係にはなりたくないですからね。

3点目は「固定費の削減」です。
IFAというビジネスモデル上、非常に重要だと思っておりまして、例えばオフィスにはお客様が来社されることは少ないので、膨大なお金をかけるのではなく、最低限の設備があり、清潔感があれば問題ないと思っています。コストを最適化し、会社として再投資したり、何かあったときに備えたりする方が大切だと感じます。

最後は、「闇雲に電話営業や飛び込み営業をしないこと」です。
大手証券会社、保険会社など駅前に支店を構えている会社であれば飛び込み営業なども可能だと思いますが、IFAはブランド力も低いので、そのような数を追うだけの手法は取らないほうがいいと思っています。いかに効率よくお客様と出会えるかが勝負ですし、証券会社にはできない動きでアプローチできるのがIFAの強みだとも感じています。

社員とのコミュニケーションはどのようなことを意識されているのでしょうか?

まずは一緒に働いていただけることを意思決定していただけたのであれば、入社前からコミュニケーションを取るようにしています。自分の体験も踏まえ、所属会社での事前準備などは積極的に共有しています。IFAとして活動する上で初動はかなり重要で、入社後は証券会社にはできないことを全てやろうと伝えています。お客様とSNS上で気軽に、こまめに連絡をすること、10分以内にレスポンスをすること、お客様とお食事の機会を設けること、新しいお客様に出会うことや知識の幅を広げるためにイベントに参加することなどを伝えています。
また、人としての立ち振る舞いも細かく指導していて、椅子にもたれかかってお客様と電話をしたり、首に挟んで電話をしたりしている社員がいれば、押しつけにならない範囲で改善を促していますね。悪気はなかったとしても、癖がつくと、お客様の前でも出てしまう可能性がありますので。
IFAの働き方は自由で時間に縛られずに自分のタイミングで動けるなどと言われてきましたが、今はハードワークが求められていると思います。市場があまり良くないことも影響していますが、そもそもIFAとして覚悟がない方や副業として片手間でやろうといった考えでは今後は生き残っていけないと思っています。育児などで働ける時間に制約のある方の一つのビジネスモデルにはなりうると思いますが、たくさん稼ぐことは難しい時代になるかと予想しています。

なぜそのようコミュニケーションや関係構築にこだわりを持たれているのですか?

現在のメンバーは自分と同じような考えを持って入社してくれたので、一瞬の関係性ではなく、お客様と同様にIFAの方とも長期的にお付き合いをしていきたいという思いがあります。今となっては親のような気持ちに近いかもしれません。少しでもいい環境で仕事に取り組んでほしいですし、感謝されるのは何年先でも構わないと思い、色々なアドバイスや情報共有を行っています。子供が親に感謝し始めるのは、大人になってからと言われるように、入社して数年経過したときに、働きやすいとか、いつの間にか成果が出ていると思っていただければいいなと思います。業務委託での雇用は稼げなくなったら辞めていくイメージを持たれがちですが、そんな悲しい会社にはできる限りしたくないですね。その方が活躍できなかったことには双方に問題があると自責の念を持つことが大切だと感じています。最近は、業務委託を含めた社員全員の出社が自然と早くなり、事前の準備やコミュニケーションを積極的に行い、社内は活気であふれ、少しずつ良い会社になってきたなと感じています。IFAとしてご入社された方も現時点で退職された方はいませんので、続けてきてよかったと思いますし、これからも継続していきたいです。抽象的な表現にはなりますが、血が通った絶妙な距離感の会社にしたいですね。

今のIFA業界についてどのように感じていますか?

IFA業界は、正直なところ横這いか少し落ち込んでいるイメージがありますね。2022年以降仕組債がノックインしお客様のマインドが低下したことや、販売手数料率引き下げの影響もあるとは思いますが、楽をして稼げる時代はもう終わったと考えており、少し厳しいようですが、そのようなお考えをお持ちの方がフェードアウトしていくことも必然であると考えています。IFAの人数も純減しているイメージでして、副業としてチャレンジされた方や片手間で稼げると思われた方が減ってきているなと感じています。
私個人の意見としてはお客様の命の次に大切なお金をお預かりする立場なので、そのような考えには賛同は出来かねますが、稼ぎ方に関してはこだわれるのでしたら、異業種の方が参入されるチャレンジ的な要素には大賛成ですし、業界自体の活性化につながると感じています。また業界全体としては、稼いだ報酬を自己投資する文化が根付くといいなと思っていまして、具体的には、新しい知識を得るために勉強をしたり、考え方の幅を広げるため、沢山の人に会うことに投資をしたりなどですかね。私自身も外部の営業研修に二泊三日で参加するなどして自己研鑽に励んでおります。また、IFAという働き方はフレキシブルなスケジュールでお客様も選ぶことができ、稼げるイメージを持たれがちですが、手数料自体も下がってきていますので、給与収入で1000万円ほど稼いでいる方が、真に顧客本位で自由な働き方を求めて、600万~700万円ほど収入が見込めるような職種でいいと思います。もちろん一部のスーパースターはいてもいいと思いますが、現実的な仕事になることが業界全体としても必要かなと思います。

IFA業界が今後発展していくにはどのようなことが必要でしょうか

経営者、IFAが今と反対の考えを持つべきだと思います。業界全体の経営者に共通している考えとしては、自分自身は営業を離れ、IFAをたくさん集めて利益を追求したいという方が多く見受けられるかと思います。またIFA自身も、お客様の信頼をお金に換えて稼ぎたいという安直な考えを持っているなと感じています。私の場合は役員報酬もかなり低く設定していながら営業と経営を両立しています。お金に対してあまりこだわりがないこともありますが、今は会社自体に資本がないと投資ができなくなるので、繰り返しになりますが、コストの最適化については力を入れています。また、これからは報酬率だけで会社の価値を計る時代ではなくなると考えていて、経営者としての実力が試されるフェーズが来るとも予想しております。会社の価値を高めていけるよう、様々な準備に取り組んでいます。IFAの方は多くの人と出会い、経験を積み、お客様が必要とするものを提案できるようになることで、はじめて真に顧客本位の提案を行うことができると考えます。その結果、IFAのお預かり資産がさらに増えていくことで、担当するお客様それぞれに過度な負担のかからない形で運用をいただける好循環になっていくと思います。「IFA一人当たりのお預かり資産はどのくらいが最低限必要か?」という質問をよく受けますが、最低10億円ぐらいが目線になってくるのではないかとお話しています。IFA業界はこれからもっと成長していかなければならない業界だと思いますので、少しでも貢献できるように自分たちのやれることを増やしていきたいですね。

経歴

株式会社Stock Fine 
代表取締役社長 松本 大樹様
   
2006年 日興コーディアル証券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)入社
2019年 株式会社Stock Fine設立
2020年 CSアセット株式会社入社
2021年 株式会社Stock Fineとして営業開始